<消えゆくもの> 【レギュレーション】 クトゥルフ神話TRPG第6版 基本ルールブック+任意のサプリメント セッションの所要時間:2〜3時間 人数:1人〜4人 推奨技能:<芸術(料理)><言いくるめ>、戦闘技能 【NOTICE】 このシナリオは何かに似ている気がしますが、深く考えてはいけません。 また、NPCには名前をつけていませんが、キーパーが「自由に」命名してください。 【ハンドアウト】 ハンドアウト1 料理店店主  あなたは小さな料理屋の店主である。無名だが地元では評判が良い。 ハンドアウト2 常連・友人  ハンドアウト1の店の常連や友人。いつも店に入り浸っており、店主の苦境に助太刀することになる。 【シナリオ本文】 1.突然の訪問  7月のある日。  ハンドアウト1がいつものように店で料理を振る舞っていると和服を着た一人の男がやって来る。  男は店の看板料理を注文するが、探索者が<芸術(料理)>でクリティカル成功をしない限り、一口食べると不満げな顔をして「噂に期待してわざわざ足を運んだが――この程度か」と吐き捨てて店を出る。(失敗した場合には料理を見ただけで一口も食べずに帰ってしまう)  もしもクリティカル成功をしたならば、男は驚いたような顔をして探索者の名前を聞く。そして男は料理を平らげると満足そうに帰っていく。    2.依頼  一ヶ月後、探索者の店に新聞社の社員だと名乗る一団が来店する。彼らはとても美味しそうに料理を平らげ、料理に対する賛辞を惜しまない。しかし、探索者が<目星>に成功すると、彼らはふとした時に表情が暗くなることに気付くだろう。そんな中で、新聞社員たちの中の一人、出っ歯で眼鏡の男が愚痴をこぼす。 「今回ばかりはおしまいだよ……。死んだら消えるものなんて、料理にできるはずがないじゃないか」  茶髪の女性社員がそれに同調するが、無精髭の男性社員は気に食わなそうな顔をしてうつむいている。 「ねえ、店主さんもそう思うでしょ? 『活きている料理』なんてあるわけないじゃないか」  出っ歯の男は探索者に話を振る。  探索者がどう答えるかに関わらず、探索者の言葉を聞いて無精髭の男性社員は思いついたような表情をする。 「そうか――わかったぞ! 店主さん! 協力してくれないか?」  話によると、彼らはとある企画で有名芸術家と料理対決をしているらしい。彼らは探索者に料理アドバイザーとして力を借りたいというのだ。今回のテーマは「ミ=ゴ」と呼ばれるキノコを利用した料理らしい。  探索者が了承してもしなくても、シーンは強引に次のシーンへと切り替わる。 3.材料の調達 「ミ=ゴは廃鉱山などによく生えてるんだ」  数時間後、新聞社の面々に連れて来られた探索者は秩父郊外の鉱山にやって来る。 「ここは、かつて甲斐武田氏によって金が採掘されていたんだよ」   無精髭の男の無駄に豊富な雑学による解説を聞きながら、探索者は山を登っていく。  廃鉱山の入り口近くでは、背丈が2m近くあるピンクがかった色の甲殻類が歩いている。 「あれがミ=ゴだよ」  無精髭の男は木の棒を構えるとミ=ゴに殴りかかる。彼はデータを持たないために放っておくといつまでもミ=ゴと戦い続けているので探索者は適宜戦闘に参加してミ=ゴを倒すこと。データはルールブックP.192参照。  探索者がミ=ゴを倒すと、その死体はみるみるうちに溶けて消えてしまう。  無精髭の男は肩を落ちしてうつむくと、小さくつぶやく。 「ミ=ゴは死ぬと死骸が消えてしまうんだ。だから料理にするのは難しい……」  彼は、一度探索者がミ=ゴを殺すまでこのことを言わない。分かっていたのに言い忘れていたのだ。  この話を聞いたならば、探索者は<クトゥルフ神話>技能を3%獲得する。  探索者がミ=ゴを探していると、「1.突然の訪問」で遭遇した和服の男とばったり出会う。男は探索者と無精髭の男を交互に見比べると「無能な男に、出来の悪い料理屋。お似合いだな」(突然の訪問時に料理をクリティカル成功していたならば、探索者に「こんな奴(無精髭の男)の相手をしていたら毒されてしまいますぞ」と言って鼻で笑う) 「死ねば消えてしまう食材をおまえたちがどう料理するか、見ものだな」  和服の男は高笑いをしながら去っていく。無精髭の男によると、和服の男こそが今回の料理対決の相手なのだという。  その後、ほどなくしてミ=ゴが見つかる。  殺さずに捕獲できたならば次のシーンへと移行する。 4.料理対決  シーンは移り変わり、ホテルの会場。究極と至高の料理対決が始まっている。  探索者は料理アドバイザーとして無精髭の男たちをサポートしなければならない。 【料理法】  探索者は、ここで「ミ=ゴを料理する」アイデアを考えなければならない。ミ=ゴの死体は時間経過によって消滅するため、その問題を解決する料理法が必要になる。 <例> ・活け造り(生きたまま刺身にする) ・お客さんの目の前に生きたまま出し、その場で料理して消える前に食べてもらう。 etc... その他、プレイヤーのアイデアを積極的に認めていくと良いだろう。 アイデアが妥当だとキーパーが判断したならば5点 普通では思いつかないような特に優れているアイデアだと判断したならば10点 が加点される。  また、探索者が料理法を無精髭の男に任せたならば、無精髭の男は活け造りを提案する。(これは5点の加点となる料理法である) 【出来栄え】  探索者の料理の出来栄えは判定によって決まる。 <芸術(料理)>が「クリティカル成功」したならば10点 <芸術(料理)>が「成功」したならば5点 <芸術(料理)>が「失敗」したならば0点 <芸術(料理)>が「ファンブル」したならば−5点 が加点される。 (全員が挑戦して、一番結果が良かったものを選択して良い) 【審査中】 ここまでの判定が終わったところで、料理が審査員の前に登場する。 和服の男の料理は『ミ=ゴ・アイスクリーム』である。ミ=ゴの表面にチョコレートを塗り、硬化した後にアイスクリームを注ぎ込んだものだ。中身のミ=ゴは時間経過によって消滅してしまっているが、本物らしいリアルな造形(表面にチョコレートを塗っただけなのだから当然である)、消えた中身の代わりに流し込んだアイスクリームが絶妙な美味しさを醸し出している。 探索者の料理と和服の男の料理を審査員たちが味わい、それぞれ好き放題なコメントをするだろう。 この時点で20点以上を獲得していたならば、審査員たちは探索者側の料理の方を高評価する。 (和服の男の得点はこの時点で19点) また、探索者が10点以上を獲得していたならば和服の男の方が高評価であるものの、探索者側の料理もそれなりに評価される。 10点未満の場合は審査員の反応がイマイチであることが露骨に分かるだろう。 【うんちく】  この対決で最も大切なのが「うんちく」である。仮に料理面では後れを取ったとしても、「料理にかこつけたそれらしいお説教」を上手くすることができれば対決に勝利することができるかもしれない。 <言いくるめ>が「クリティカル成功」したならば15点 <言いくるめ>が「成功」したならば5点 <言いくるめ>が「失敗」したならば0点 <言いくるめ>が「ファンブル」したならば−10点 が加点される。 和服の男は「ミ=ゴ・アイスクリーム」について死ぬと体が消滅してしまうミ=ゴの儚さとアイスクリームの溶けやすさを語り、そして世の中のせわしなさに苦言を呈して「甘いものでも食べて一息つくのが大切だ」と話をまとめる。 5.結果発表 和服の男の得点は24点である。探索者が25点以上の得点を獲得していたならば、探索者たちは料理対決に勝利する。 【勝った場合】 和服の男は怒った様子で捨て台詞を吐いて帰っていく。 「あんなのはお手軽なジャンクフードが庶民ウケしただけだ。本当に旨かったのはどっちだったか、おまえたちは分かっているはずだ」 無精髭の男は悔しそうな目で男を睨み返す。 眼鏡に出っ歯の男はそんなことは気にせずに勝利を喜びはしゃいでいる。 どちらにしろ勝利は勝利だ。探索者の店で祝勝会が行われる。探索者たちにも新聞社から十分な謝礼が支払われることだろう。 シーンが切り替わり、自宅の書斎に座る和服の男が満足げな顔で窓の外を見ながら「士郎の奴め……」と言ったところでシナリオは終了となる。 【負けた場合】 「その程度でミ=ゴを語ろうなどとは片腹痛いわ」 和服の男は高笑いしながら去っていく。 無精髭の男は悔しそうな顔でうつむいたままである。 新聞社の社主が無精髭の男を怒鳴り散らしている。 数日後、探索者の店に一冊の古書が届く。 『アブドゥル・アルハザードの美食録』 差出人は美食倶楽部と呼ばれる会員制の料理屋である。 探索者が調べると、この間の料理対決で戦った和服の男こそがそこの主人であることがわかる。 これは、和服の男が探索者を見どころある料理人と認めて送った期待の証である。 探索者がこの本を研究していけば、いつかは和服の男に勝てる日が来るのかもしれない。 ---------------------------------------- 『アブドゥル・アルハザードの美食録』 正気度ポイント喪失:1D10/1D20 <クトゥルフ神話>成長:+18% 研究し理解するための期間:72週間 呪文:<魚を引きつける>(ルールブックP.258) クトゥルフ神話に登場する怪物たちの味と料理法について書かれた魔道書。 アブドゥル・アルハザードの名が冠されているが、本人が書いたものであるか どうかについては不明。 ---------------------------------------- ★最後に★ このシナリオはエイプリルフール用のジョークシナリオです。 ご自由に使用していただいて構いませんが、「ホラーじゃない」「シナリオの酷さに怒ったプレイヤーに殴られた」「某料理漫画のパロディですか?」「このシナリオを作ったのは誰だあっ!!」等一切のクレームに対して当サークルは責を持ちません。 永久パピルス #6 http://brainmixer.net/yibbtstll.html 永久パピルスでは、ボリュームたっぷりなシナリオ集をメロンブックス様で販売しています。 『イブ・ツトゥルの景象』B5/120P/価格1000円 (https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=135762) 『バグ・シャースの侵蝕』B5/108P/価格1000円 (https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=169929)